ここ数百年、生活はとんでもなく豊かになりました。快適になりました。その背景には科学の発展があります。飛行機といったとんでもないスピードで動く移動手段、衛星通信といった遠く離れた世界をつなぐ伝達手段、多くの病から人を救う薬などなど言い出せばキリがありません。そのほとんどはあって当然と感じるのも無理はないです。そのぐらい生活に浸透しています。
さて、ここ数回は食糧生産に革命を起こしたハーバーボッシュ法についてのお話をさせてもらってます。今回はついにハーバーに触れます。と言っても、ほんの少し出てくるレベルという感じですが…… 出来る限り、文系の方でも理解できるように書いてきたつもりですし、今回も書いていくつもりです!よろしくお願いします!
前回はこちら
不可能と言われた窒素固定
前回もお話しさせてもらいましたが、窒素を捕まえるのはそう簡単に出来ることではありません。それは窒素が非常に安定した物質だからです。わざわざ何かと反応しようという気にならないということですね。
我々人間としてはそんな反応しにくいものは使えないですし、植物も使うことはできませんからなんとかして反応させて反応しやすい使いやすい別の物質に変えたい(最終目標は肥料)と思うわけです。
通常、窒素固定細菌という細菌たちがせっせと反応させて土壌に与えていました。しかし、これでは人口爆発には耐えれません。じゃあ、こいつの反応の真似をしようとなるわけですが、それもそう簡単にはいきません。
普通には反応しない。何かすればできるのだろうけれども全くわかりそうにない。不可能という言葉がドンピシャな状態と言っていいでしょう。
窒素固定の方法の模索
世界中の研究者が研究しまくった結果、いくつかの方法が発見されていきました。
ビルケランドアイデ法
まずはビルケランドアイデ法です。この方法は空中で火花放電を起こし、空気中の窒素と酸素を無理やり反応させるというものです。窒素がいくら安定だといっても電力をかけまくればなんとか反応してくれます。こうして反応させて得られた一酸化窒素を変換し硝酸(窒素を含んだ酸だと思ってもらえればOK)にするというものです。
無事できた!と思う方も多いかと思います。ただ、一つ問題が。反応させるために火花放電を起こさなくてはならないのですが、これはいわば雷のようなものです。(温度にするとおよそ3000度)つまり、とんでもない電力を必要とします。これでは工業生産はできませんし、出来たとしても確実に損をします。
〜ちょっとした無駄話〜
昔から言われている「雷が落ちたところはいい畑になる」というのは実はこれも同じようなことと言われています。雷が落ちたことで空気中の窒素が反応して土の栄養になるとか。
基本的には空気中の窒素分子は微生物か雷しか反応させることはできないということです。意外じゃないですか? そんなことが僕たちの食生活を支えてるって。
フランクカロ法
こちらはカルシウムカーバイドという化合物と窒素を反応させることでアンモニアを合成するというものです。ビルケランドアイデ法に比べると電力は少なくて済みます。
電力は1/4ととんでもなく省エネな方法です。しかし残念ながら正直これでも十分多いです。どのくらい多いかというのはおそらく次回あたりで体感していただけるかと。実際の数字を出そうと思ってるので。
アンモニア直接合成法との戦い
当時、反応化学は飛躍的に進歩していました。反応化学の発展を支えた多くの研究者ももちろんこの不可能に挑戦しました。
上に書いたような方法では残念ながら工業化には至りません。上の方法ではない手法が必要です。その一つとして同時期に研究されていたのがアンモニア直接合成法というものです。空気中の窒素を水素と直接反応させてアンモニアを作ろうというものです。
高校化学を習った人なら必ず知っている超重要な「ルシャトリエの原理」を考えたルシャトリエさんはこの時期の人です。ルシャトリエさんはアンモニア直接合成法を考えていました。ある条件のもとで反応が進行するということを発見したのですが、その条件下にすることが難しく、その実験中に助手を亡くしたこともあり彼はこの分野から離れます。
さて、もう1人有名な方がいます。「ネルンストの式」でおなじみのネルンストです。彼も同じようなある条件のもとなら反応が進行すると発見しました。しかも、しっかりと実験を成功させました。しかし、生成したのはわずか0.003%でした。あまりにも少なすぎる。これでは残念ながら工業化は出来ません。
ハーバーのアンモニア直接合成
ハーバーもアンモニアを直接合成しました。彼もルシャトリエやネルンストと同じような条件のもとでアンモニアが合成できると発見しました。
ネルンストよりも少し緩めのある条件で行なった実験では0.01%生成することができました。ネルンストはある条件が厳しければ厳しいほど多くできるはずなのに自分の行ったものより緩い条件にも関わらずそんなに多くなるはずはないというような感じのことを言い彼を酷評しました。
次回予告
ついにハーバー登場しました! ハーバー以外にもある条件で窒素を反応できるということが発見しました。このある条件に関しては次回ゴリゴリに触れる予定ですのでお楽しみに。ネルンストにボコボコに言われたハーバーさんがこの後どのようなことをして乗り越えていくのかご期待ください。実はとある人がどちらが正しいかを証明します。その人は○○○。
次回はこちら!!
ハーバーボッシュ法 その4 〜日本人の活躍〜 - じょんのかがく喫茶
参考文献に関しては最後にまとめて載せますので最後までお待ちを……