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ハーバーボッシュ法 その2 〜植物の窒素利用〜

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いらっしゃいませ!
今日もいいもの用意しときましたよ!

 

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    僕の専攻している化学の話をしたいと思います。化学は日々の生活になくてはならないものをたくさん生み出しています。汚い水を浄化したり、車の燃料であるガソリンだったり、顔を綺麗に見せる化粧品だったり。多くの人にとってそれらはあまりにも身近なものであり、もともとあったもの、そう感じてしまいがちです。それらのほとんどは多くの研究者が長い時間をかけて作ったものばかりです。

    さて、今日は前回に引き続き、ハーバーボッシュ法について語っていきます。今回はハーバーボッシュ法について詳しく語る前にどのように植物が肥料を利用しているのか、窒素を捕まえることの難しさについてお話ししていけたらと思います。

前回はこちら

 

www.johnsnews.com

植物の窒素利用

    窒素といえば空気中に78%ほど含まれている物質です。前回もお話しした通り、窒素は植物の成長に欠かせない成分です。

    前回のお話で窒素源としてチリ硝石を肥料として利用していたという話をしました。

    多くの植物は土壌中の硝酸態の窒素をまず吸収します。その窒素をいろいろあって変換しアンモニア態にします。ここからグルタミン酸と呼ばれるアミノ酸に変換し、それを使って植物は成長していきます。つまりは空気中の窒素ではなく土の中の窒素を利用しているというわけです。

 

窒素を捕まえる

    さて、考えてみて欲しいのですが、肥料の見つかる前はどのようにして窒素を手に入れていたのでしょうか?

    もともとそこにいた植物が枯れて、その中の窒素を利用していたというのもあるでしょう。じゃあもともとそこにいた植物はどうやって窒素を手に入れたのって話ですよね。重要な窒素を捕まえる方法があります。それは窒素固定細菌と呼ばれる細菌が行う窒素固定です。

    窒素固定細菌は空気中に無数に存在する窒素を捕まえることが出来ます。といっても彼らだけでは捕まえることはできません。例えばマメ科の植物の根に宿り、根粒という特殊な器官を作ります。そこで空気中の窒素を変換することが出来るのです。つまり、窒素固定細菌だけではなくマメ科の植物と共同作業で窒素を捕まえているということです。

    窒素固定細菌とマメ科の植物のおかげで空気中の窒素を植物に取り入れて、それがいずれ他の植物の肥料になるというわけです。

    このようなことを経験的に知っていた人類は豆を畑で育てて、その後に目的の植物を育てるなどの方法をしたりしていました。輪作とか言いますよね。豆で土地を豊かにして、キャベツなどのたくさん栄養を使う植物をそこで育てるといったような。

    この窒素固定細菌の代わりにチリ硝石を撒いて肥料にしているというのが前回のお話のラストでした。そして、このチリ硝石がいずれ枯渇するという問題が現れて、化学研究者がどのようにして窒素を捕まえるかということを考えることになりました。

 

窒素固定の難しさ

     空気中に8割近くある窒素。これを読んでいるあなたも今すぐ取ることが出来ます。ただ、取るだけでは植物は利用することが出来ません。上の説明のように窒素は直接空気中のものを使っているわけではないからです。

     人口爆発に耐えるような食糧生産をするために欠かせない肥料を作るためには窒素固定細菌たちのように空気中の窒素を捕まえる(固定する)必要があるということです。

    捕まえるといっていますが、そんなに簡単なことではありません。空気中に含まれる窒素分子は非常に安定しています。安定しているということは他の物質と反応しないということです。普通、化学反応は反応する物質同士がより安定するように反応が進みます。それぞれがバラバラでいるよりも一緒になる方が安定するという時に反応が進むということです。窒素はすでに十分安定していて、他のものとわざわざ反応する必要が無いのです。反応するにはある程度エネルギーが必要ですから反応すればむしろしんどいだけなのです。

    当然ながら当時の化学者は窒素が反応しにくいことは知っています。そのため、空気中の窒素を捕まえて肥料に利用するというのはそう簡単にできることじゃないということも気づいています。

    実際、今でも窒素固定細菌がどのようにして窒素を捕まえているかというのはまだ完全にはわかっていません。そのぐらい難しいことなのです。

 

次回予告

    今日はここまでで。ここで切らないとキリがとても悪くなってしまうので…… ハーバーボッシュ法に全く触れてない記事が2つ続いていますが、次回はやっと窒素を反応させるお話です!社会の状況や窒素固定の難しさを伝えた上でハーバーボッシュ法に触れてもらう方がすごさを体感してもらえると思うので…… 高校化学で必ず習うあの人も研究していたり、大学化学で一度は聞いたことのあるあの人が異論を唱えたり、日本人が関わっていたり、この後もいろいろなことが起こります。予定では全2回だったんですけど、いろいろしっかり書いていると案外増えちゃいますね。今のところ5〜6回ぐらいかと思ってます。ぜひ全部読んでもらえると嬉しいです。

 

次回はこちら

化学最大の発明 ハーバーボッシュ法 その3 〜実現不可能とされた反応〜 - じょんのかがく喫茶

参考文献に関しては最後にまとめて載せますので最後までお待ちを……