じょんのかがく喫茶

厳選された至福の1杯いかがですか?

ハーバーボッシュ法 その5 〜ハーバーボッシュ法の確立〜

スポンサーリンク

 

いらっしゃいませ!
今日もいいもの用意しときましたよ!

 

 

 ここ数回、ご紹介しているハーバーボッシュ法。前回、やっとハーバーによって空気中の窒素を捕まえることに成功したというお話を書かせてもらいました。こうやって見つかった方法を工業化できれば人口爆発に耐えうる肥料生産が可能になるわけですが、この反応の重要なポイントとなる高温高圧という条件が工業化を困難にしていました。

 今回はこの困難をどう乗り越えたかについてのお話です。

 

一応、今回である程度完結するのでこれまでのものを読んでいない人はこちらからどうぞ!

化学最大の発明 ハーバーボッシュ法 その1 〜人口爆発と農業〜 - じょんのかがく喫茶

化学最大の発明 ハーバーボッシュ法 その2 〜植物の窒素利用〜 - じょんのかがく喫茶

化学最大の発明 ハーバーボッシュ法 その3 〜実現不可能とされた反応〜 - じょんのかがく喫茶

化学最大の発明 ハーバーボッシュ法 その4 〜日本人の活躍〜 - じょんのかがく喫茶

ハーバーの改良

 ハーバーはアンモニア合成に成功してからも研究を続け、ネルンストのアドバイスなどもあり、200~300気圧,400~600℃の条件でOs触媒(触媒というのは反応を速くする魔法の物質だと思ってもらえればいいです。)を使うと10%~20%程度アンモニアに変換できるということを発見しました。最初に言っていた0.01%とかと比べるととんでもない量ですよね。

工業化への課題

 さて、ここで工業化への課題を一度まとめてみたいと思います。

 前回から言っているように高温高圧という条件がゆえに反応装置を作るということがそんなに簡単なことではないということでした。その環境に耐えうる装置を作ったり、容器自体が反応してしまうことを防がなくてはいけないなど様々な問題が存在します。

 そして、もう一つ問題があります。それは触媒です。高温高圧という条件が重要なのはたしかなのですが、それだけではあまりにも時間がかかりすぎるのです。少しでも反応を速くするには触媒というものが必要になります。

 触媒というのは簡単に言えばそれがあるだけで反応が速くなるというような物質です。このような反応にはこの触媒が良い、でもあっちの反応には使えないといったように反応ごとに使えたり、使えなかったりします。

 上で書きましたが、ハーバーはOs触媒を利用することでたくさんのアンモニアを得ることを可能にしました。じゃあ、それを使えばいいんじゃないの? と思うかもしれませんが、Os自体がかなり高価な物質でやはり工業化には適していません。つまり、Os触媒に代わる触媒を探さなくてはなりません。

高温高圧に耐える装置を作ろう

 これまでにないような高温高圧の反応。言うまでもなく課題の山です。この課題をすべて解決したのがハーバーボッシュ法のもう一人の発明者 ドイツの化学会社BASFのカールボッシュです。

 この当時、高圧の装置といっても200気圧常温程度のものしかありませんでした。どのようにハーバーの反応を実現するような温度と気圧を実現するか。

 1910年、ボッシュは装置を作りました。しかし、80時間程度で爆発。当初は装置の鉄と窒素が反応したのだと考えられました。

 しっかりとこの装置を調べると、鉄に含まれる炭素が水素と反応したことと鉄の中に水素が溶け、合金となってしまっているということがわかります。この合金はもろいため高温高圧に耐えられなくなって爆発を起こしたというわけです。

 じゃあ、鉄以外を探せばいいとなりますが、もちろんそんな簡単には見つからず。

 じゃあ、鉄が窒素や水素と接さないようにしようと膜を貼ったりしますが、高温高圧なため膨張してしまい結局接してしまうことになる。

 そうして、結局炭素の少ない鉄を使ったり、2重構造でもろくなっても耐えられるようにしたり、水素と高圧化で鉄が出会わないように穴をあけたり、様々な工夫をし、なんとか高温高圧でも反応できるような装置を完成させます。このほかにも反応にかかわる様々な問題を解決し、ハーバーボッシュ法の工業化を成功させます。

触媒の問題

 さて、最後の課題である触媒についてです。ハーバーボッシュ法という名前ですが、ハーバーでもボッシュでもない人物が触媒を発見します。

 触媒を発見した人の名前はアルヴィンミタッシュです。こんなに偉大なことをしているにもかかわらず、日本語版Wikipediaには載っていないという人です。

 彼もBASFの研究者です。つまり、ハーバーボッシュ法はBASFによって工業化された反応といっていいわけですね。

 彼は1909年から3年間もの間ひたすら触媒を探し続けました。調べた触媒の種類は何と2500種類以上。そんなにたくさんの触媒を良く用意したなと思います。実験回数は2万回以上。そんな実験からにいだされた触媒が酸化鉄をベースにアルミナ(アルミニウムの元と思ってもらえばいいです)と酸化カリウムを少し混ぜるというものです。この触媒であればOs触媒よりも安価に用意できます。

ハーバーボッシュ法の工業化

 反応を発見したハーバー、高温高圧でも耐えられる装置を作り出したボッシュ、安価な触媒を発見したミタッシュの3人によりハーバーボッシュ法が1913年に工業化されました。

 こうして、人類は初めて空気中から窒素を捕まえられるようになりました。窒素を捕まえられるようになったことは人類にとってとても大きな影響をもたらしました。窒素は肥料に必須な物質で、これがなくては人類は飢饉に陥るという状態でした。ハーバーボッシュ法確立されたことで肥料が人工的に作れるようになり、人類の食糧問題は一気に解決に進みます。このような功績から「空気からパンを作った」と言われています。

 ここまでとんでもなく長い記事を書いてきましたが、こうして化学最大の発明「ハーバーボッシュ法」が誕生したわけです。この発明があるから今の人類がいるといっても過言ではありません。もし見つからなければ食糧不足に陥って今のような世界はきっとないでしょう。彼らの発見は偉大です。

おわりに

 何かを作るというためには多くの人の力と時間、お金が必要になります。私たちが知らない間に使っているものすべてに多くの研究者、技術者の努力が隠れています。彼らのほとんどは生活を豊かにしたいという思いをもっていたり、自分の発見が何かの役に立てばいいと思う人たちだと思います。こうやって生活できているのもそんな人々がいるからだとたまには思い出したいものですね。

 

次回予告

 おいおい、もうハーバーボッシュ法はできたじゃないかと誰もが思ったところで次回予告を挟みます。といってももうほとんど話しつくした感じはしますけどね。次回はハーバーボッシュ法のその後についてお話させてもらえればと思います。

 

 

 

 ここまで読んでくださった方は本当にお疲れさまでした。一応、本編としてはここで終わりです。こんなに長い記事を読んでいただきありがとうございました。きっと意味の分からない部分もあったかと思います。変な文もあったかと思います。それにもかかわらず、本当にここまで読んでくださった方がいるというのは感謝してもしきれません。この記事を読んで少しでも科学が面白い、いろんな人の苦労があるんだと感じてもらえたらと思います。もしよければ次回も読んでもらえればと思います。