じょんのかがく喫茶

厳選された至福の1杯いかがですか?

世界最強の酒 スピリタスはどうして96%なの??

 

いらっしゃいませ!
今日もいいもの用意しときましたよ!

 

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最強のお酒といえばスピリタスですよね?

今消毒用に使う人が多くて不足してるとかなんとか……

ところで、スピリタスの度数、ご存知でしょうか?

なんと、96%!!

高すぎますよね?

ところで、なんで96%なんでしょうか?

 

化学を勉強してきた人間はみんな知ってることなんですが、おそらく高校化学で止まってる人にとっては知らない世界だと思うので、紹介させてもらいます。

 

 

スピリタスってなに?

スピリタスとはポーランド原産の蒸留酒です。

世界最高のアルコール度数96%を誇るお酒です。

日本酒で代替15%とかなのでそれと比べたらとんでもないアルコール度数ですよね。

この度数の高さにより、第4類危険物に指定されています。

タバコの火でも引火するって話よく聞きますよね。

 

蒸留ってなに?

化学を勉強したことのある人は一度は聴いたことのある蒸留。

実験室では以下のような装置を組んで行います。

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蒸留は液体の沸点の違いを生かした精製法の一つです。

 

まず、左側に混合物を入れて、あっためます。

あっためていくと、次第に液体が気体に代わります。

こうして気体になった液体を真ん中にあるリービッヒ冷却器と呼ばれる管を通すことで冷やします。

気体は冷えると再び液体に戻ります。

こうして、右側に液体がたまっていくわけです。

 

蒸留のポイントは液体の沸点は物質ごとに違うということです。

 

例えばA(沸点100℃)、B(沸点50℃)という液体があったとしましょう。

AとBの混ざった液体を50℃にキープします。

すると、Bは気体に変化していきます。

でも、Aは液体のままです。

つまり、この時に気体を濃縮して手に入る液体はほとんどがBだと言えます。

 

たとえ見分けがつかなくても、こうやって、沸点の違いを利用すれば分けることができるということです。

 

蒸留は一回だけじゃ無理……

上で片方の物質を優先的に気体に変えて、純粋な液体を得るみたいなことを書きましたが、嘘です。

 

実際得られる気体は混合物です。

というのも、お互いが相互作用して、一緒に蒸発していきます。

 

詳しく知りたい人は気液平衡やラウールの法則で検索すればたくさん出てきます。

(僕には多くの人に分かってもらえるような専門知識抜きの説明ができない……) 

 

 

蒸留したからと言って、蒸気を液体にするだけでは完全に純粋なエタノールは得られないということです。

とは言っても、得られた液体は元の液体よりも濃度が少し濃くなったものになります。

 温度を上げていって、蒸発が始まると、エタノールが多めの混合物が気体になります。

これを冷やすと、エタノール多めの混合液ができるわけです。

もともとの液体はエタノールが少なめの混合物に変化しています。

 

さらに、こうして得られた気体に同じ操作をし続けると、どんどんどんどんエタノールが多めの混合液になっていきます。

 

こうやって、蒸留酒と呼ばれるものはアルコール度数をどんどん高めてます。

ウイスキーなどで20〜30回程度、スピリタスは70回程度蒸留を繰り返します。

蒸留塔を見たことある人はイメージ掴めるかなと思います。

 

共沸ってなに?

とにかく繰り返せばどんどん濃くなるということがわかったわけです。

100回とか繰り返したら100%エタノールの酒が出来るじゃん!! と誰もが思うわけですが、それは出来ません。

 

AとBが仲良し(相互作用する)なときに不思議な現象が起こります。

 

それは共沸です。

共沸というのは、ある濃度に達するとに気体の濃度と液体の濃度が一致する現象です。沸騰させて、気体を手に入れて、それを液体にしても元の液体と同じままということです。 

何度繰り返してももうこれ以上濃くはならないということです。

 

で、その限界が96%というわけです。

 

蒸留という方法ではどう足掻いても、96%以上にはならないためスピリタスは96%になっているんです。

つまり、スピリタスは限界まで蒸留を繰り返した酒というわけです!

 

無水エタノールってなんなの?

ところで、コロナ対策として無水エタノールが流行りましたよね?

あれなんだよって話です。

無水というだけあって、ほとんど水は入ってません。

日本では99.5%以上のものが無水エタノールと呼ばれているそうです。

 

おいおい、さっき96%が限界とか言ってたじゃないか! と思う方も多いでしょう。

 

たしかに上で話したように蒸留ではどう足掻いても96%以上は不可能なわけです。

 

ただ、水とエタノール以外に他の物質を混ぜると共沸を回避して(正確にはズラして)さらに高濃度にすることができるんです。

 

例えば、ベンゼンなどがめちゃめちゃ有名です。ほんのちょっと混ぜるだけで効果があります。

ただ、おそらく、薬局に売られているのはベンゼンに変わるもっと体に優しいものでしょうね。

 

めちゃめちゃ濃い酒を飲みたいからといって無水エタノールとか飲んだら体に良くないよって話もついでにしておきます(笑)

 

日本酒はなんで蒸留酒より度数が低いの?

ところで、蒸留酒は高濃度なイメージがありますが、日本酒などは20%ぐらいですよね。

他のお酒も醸造酒はだいたいは20%以下のものが多いですよね。

あれにも実は原因があります。

醸造酒は微生物たちの働きでエタノールを作ります。

 

微生物たちは糖分をエタノールにどんどん変換していきます。

そして、ある程度の濃度になると、微生物たちは自らが作り出したエタノールによって活動が阻害されていきます。

 

その濃度がだいたい20%あたりというわけです。

もちろん、種類や微生物の状態などである程度は変わるんでしょうけど。

 

おわりに

今回は最強の酒、スピリタスの濃度について書かせてもらいました!

 

正直、書くのがめちゃめちゃ難しかったです……

専門的なことを書くと、ほとんどの人がわからなくなりそうですし、だからと言って簡単に書きすぎると嘘だらけになってしまうので……笑

頑張って書いたつもりですが、ちょっとモヤモヤ感が残るかもしれませんね……

 

 

そんなモヤモヤしていて、詳しく知りたい方はこちらとかを見れば理解が深まるかとおもいます!

http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12000/21048/1/No127p06.pdf