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「使い道なんてないけど……」世界を変えた電磁場の意外な発見秘話

 

いらっしゃいませ!
今日もいいもの用意しときましたよ!

 

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みなさんこんにちは!

今日は電磁波の発見とそれが実際に人間の役に立つようになったことについて簡単にお話しさせてもらえたらなと思います。そこから、現在の日本の研究について少しでも触れることができたらなと思います。

 

 

電磁波の発見にはとんでもない時間がかかっています。少し長くなるかもわかりませんが、電気の発見から少しずつ説明していければと思います。

電気の発見

 最初の発見は静電気の発見でした。といっても、電気や磁気の仕組みは全く分かっていません。琥珀に羽根などがくっつくという現象を発見したのです。このような記録は紀元前3~4世紀の書物に記載されています。この不思議な現象について多くの人が考え、この原理が分かったのはおよそ2000年後、イギリスのギルバートが琥珀以外にも様々な物質で同様の現象が起きるということを発見します。

 その後、多くの科学者が研究を進め、1700年代には技術もかなり進歩し、静電気をためる装置であるライデン瓶が発明されます。アメリカのベンジャミンフランクリンはライデン瓶で起きる現象を分析し、「電気は1種類であり、異なるものが触れることで移動し、増えたり減ったりする」ということを明らかにしました。また、有名な凧の実験で雷は電気だということも発見しました。

 

電池の発明

 電気についてやっと大まかな形がつかめてきたことで一気に研究が進みます。ボルタはうまいことすれば電気の過不足を自由に作れるのではないかと考え、研究を重ね、電気盆というものを作ります。さらに改良を進め、現代でもかなり重要な部品であるコンデンサーを作りました。さらにボルタは少し前に発見された「動物に金属を触れさせると電気が流れる」という現象を分析し、「異なる金属を特定の条件下で触れさせれば電気が流れる」ということを発見し、電池を発明します。この発明により、継続的に電気を生み出すことができるようになり、一気に研究が進みます。

 

電磁気学の確立

 電池を使うことで様々なことが分かるようになりました。まずはオームの法則。「電圧は電流に比例する。」ということが分かりました。さらに、アンペールが「電流が作る磁力線の向きは電流の向きに対して右回りになる。」というアンペールの法則を発見しました。また、コイルに電流を流すと磁石と同じような現象が起きるということも発見しました。これらの発見により電流と磁力はかなり関係深いものだということが分かりました。さらに研究は進みます。ファラデーはコイルの近くで磁石を振ると電気が生じるということを発見しました。電磁誘導として知られている現象ですね。このような研究をまとめた研究者がいます。マクスウェルです。1864年、マクスウェルはファラデーの発見から電気と磁気の関係を4つの式にまとめました。それらの式はマクスウェル方程式と呼ばれており、多くの大学生を今でも苦しめているとても重要な式です。マクスウェル方程式の完成により古典的な電磁気学は確立されました。

 

電磁波の発見

 マクスウェル方程式により古典電磁気学は確立されました。この式の実証に重要な役割を果たしたのがヘルツです。ヘルツは非常に優秀な学者でしたが、彼にとっても実証はとても難しいことでした。彼は電磁誘導に関する研究で博士号を取り、様々な理由から数学の教員になります。ここで彼は数学の知識を付け、かつては難しく思えたマクスウェル方程式の理解を深めます。そして、再びマクスウェル方程式の実証に挑戦します。様々な実験を重ね、電気が波を起こしていることを実証します。さらにそこから反射や屈折などの現象を実証し、最終的に完全にマクスウェル方程式を実証しました。

 そんな彼にはとても有名な話があります。彼に「電磁波は何かの役に立つのか?」と聞くと、「なんの役にも立たない。ただ、マクスウェル方程式の実証に必要だっただけだ。」といったそうです。つまり、当時は電磁波は研究した本人にも役に立ちそうにないと考えられていたということです。これがおよそ1880年ごろです。電気が発見されてから2200年ほどの歳月がたっています。マクスウェル方程式の発見からはおよそ30年が経っています。

 

電磁波の利用

 先ほども言った通り、発見当時はなんの役にも立たないと考えられていた電磁波。この電磁波が使えるんじゃないかとマルコーニが電磁波発見から30年後無線通信を発明します。ただ、当時有線モールス信号は実用化されており、有線の公衆電話も確立されつつあったため一般に普及は極めて困難でした。船舶などなら確実に役に立つと考え、船舶関係に売り込み、無線通信はなくてはならないものになっていきます。さらに、無線通信は進化していきます。1906年、ラジオ放送に成功します。1930年ごろにはテレビ放送にも成功します。日本での初めてのテレビ実用化は1953年でありますからマクスウェル方程式から電磁場の存在が予想されてからおよそ100年かかってテレビが誕生したということになります。その後も携帯電話など私たちの身の回りにあるさまざまなものに電波が使われるようになっています。

 

理論が生まれて何年もかけて実用化される

 今日は電磁波について簡単にまとめさせてもらいました。電磁波が発見されてから何年かけてラジオやテレビに応用されているということに驚いた人も多いのではないでしょうか。思っているよりも何かが発見されたからと言ってすぐに役に立つものではないですし、発見者が役に立たないといっていたものがこんなにも役に立つものになったり、研究というのは先が読めるものじゃないと感じてもらえたかなと思います。今、日本は研究費を減らしたり、即効性のない研究にはお金を出さなかったり、コスパ重視で研究費を出したりしています。このような方法は大きな技術を生み出さないことはこの話から簡単にわかるかと思います。確かに、中には本当に役に立たない研究もあるかもしれませんが、その中にたまにとんでもない宝が含まれていて、その研究が人類の生活をよりよくするということを知ってもらいたいです。研究は5年や10年で役に立つなんて考えてほしくないものです。大学生ですらこのように感じているのですから、研究者の人はもっとそう感じているはずです。研究について政治家だけでなく、一般人も考えるような機会があればいいなと思います。